星が降った夜があった。ただの流れ星ではない――天の龍が星座を編む中で、ひとつの恒星が軌道を外れ、地上へと落下した夜のことである。その星は山奥の鍛冶師の炉の中に落ち、炎と融合した。鍛冶師の名は「鉄心」といい、三代にわたって武士の剣を鍛えてきた名匠であった。鉄心は落星の欠片を素材に、生涯最高傑作の刀を鍛え上げた。その刀の刃は夜空のように黒く、振るうたびに星の光を放つという不思議なものだった。刀の名は「星魄(せいはく)」。星の魂を宿す刃である。
星魄を手にしたのは、鉄心の息子ではなく、流れ者の浪人「虚空の浪人・蒼原」であった。蒼原はかつて名門道場の師範代であったが、諸国の争いに巻き込まれ、師匠を失い、仲間を失い、今は星雲の道を一人さまよう浪人となっていた。蒼原には贖うべき過去があった――自分の判断ミスで、五十人の仲間を死地に追い込んでしまったのだ。それ以来、蒼原は自らを責め続けながら、意味のない旅を続けていた。鉄心は蒼原の目に宿る星の光を見て、この男こそが星魄の主だと確信した。
「この刀はお前のものだ」と鉄心は言った。「星が落ちた夜から、この刀はずっとお前を待っていた」。蒼原は星魄を手に取った瞬間、刀の中に宿る星の記憶が流れ込んできた。それは宇宙の記憶――誕生から死滅までの壮大な物語であり、蒼原の小さな後悔など、宇宙の時間尺度では塵ほどのことだと教えてくれた。しかし蒼原はその後悔を捨てようとはしなかった。それが自分を人間として繋ぎとめているものだと知っていたからだ。星魄を腰に差し、蒼原は星雲の道へと踏み出した。今度は逃げるためではなく、守るために。
星雲の道とは、世界と世界の間に存在する霞の回廊である。そこでは様々な存在が行き交い、善と悪が入り乱れる。蒼原は星魄の導きに従い、幾つもの戦いをくぐり抜けた。そのたびに刀は星の光を放ち、斬られた者の魂を星座へと送り届けた。鬼の織り手・業炎もその噂を聞き、蒼原の前に現れた。「その刀が欲しい」と業炎は言った。「星魄があれば、わしの暗黒の布をさらに完璧に仕上げられる」。二人の戦いは三日三晩続き、最終的に蒼原が一本取った。だが蒼原は業炎を斬らなかった。「光がなければ影もない。お前の仕事もまた、宇宙に必要なのだ」。
――蒼原の旅は終わらない。星魄が輝く限り、その刃には守るべき者が映り続ける。贖罪とは過去を消すことではなく、今を生きることだと、星の魂が囁いている。